芝本ねんどの日記

すげえ日記

明日花キララ

4月28日(火)

 

僕の家の前の道は田舎のくせに車の通りがそこそこ多い。

しかも、軽自動車がすれ違えないほどに道が狭いもんだから結構気を付けて歩かなくてはならない。

もっといえば、狭いだけじゃなくて片側が高い田んぼの畔になっている。

さらにいえばその畔の前にガードレールは無く、つまり普通に歩いていてもふらついて落ちてしまえば、ワンチャン大怪我をする。

なのに、なぜか、一向にそれに対する安全柵が取られない。

普通に考えて、ガードレールぐらい設置したら良いと思うのだけど、

和歌山もお金が無いし、なんか政治とか、そういうしがらみがあるんだろう。

 

いつだって、どこにいても、しがらみはある。

僕たち人間はそういった、逃れられないしがらみの中で少しでも、楽しく生きようとするために折り合いというものをつける。

そしてその、折り合いのつけ方を、しくじると大変なことになる、という事実からも僕たちは逃げられない。

 

「宿題せんと遊びに行ってもええけど、帰ってきてご飯食べたら絶対すぐせえよ。」

文字に起こすと、とんでもなく怖くなってしまったけれど、

まぁ、それ以上に、僕のお母さんは怖い。

「分かってるよ。当たり前やん。」

小4の頃の僕の脳内は、

[ 遊び4割・エロサイト4割・エロ本2割 ] 

その日の僕は友達の家にエロサイトを見に行く約束をしていた。

友達の家に行く前から興奮状態の僕に母の言葉は、聞こえていながら、聞こえていない。

 

その日、友達の家でエロサイトに興奮しきった僕は、

晩ご飯を食べ終わった後、宿題を完遂する力など当然にないほど疲れていた。

 

家に帰って、お母さんに言われる。

「はよ、ご飯食べて、はよ宿題しいや。」

その日はもう股間の筋トレでヘトヘトだから、

「うん。宿題するよ。」など、言いながらも、もうすでに眠気が限界を迎えていた。

晩御飯を食べ終わった後、お母さんは家事に気を取られていたので、

「あぁ、これはいけるな。」と僕は思った。

 

普段、誰もつかわない仏壇の部屋の隅に座布団を持っていき、

 

寝た。

 

[ エロサイトを見に行くという権利 ]は[ エロサイトから帰ってきたら宿題を速攻終わらせる義務 ]を背負うことによって得られるものだ。

つまり、義務を果たさずして権利を行使している状態である。

全く折り合いがついていない。

母による独裁国家が築かれている芝本家で、このような事態が起こるなど言語両断。

 

もちろん、大変なことになる。

 

しかも、運が悪いことに、その頃の僕と言ったら、お母さんの怒りを買うことばかりしている時期だった。

 

僕が眠りについてから数十分経った頃、とんでもない激痛に苛まれる。

「っっっっっっっっっっえっっっっ!!!!いっっっっっっった!!!!!」

目を開けるとそこにいるのは、もちろん、鬼だ。手にはお盆。

お盆は鬼の最大の武器なのだ。

「あんた、ええ加減にせえよ。」

「はい。」

「そこ座れ。」

僕は黙って正座をする。

「最近、お前ええ加減にせえよ。何回同じ事言うたらわかるねん。」

「はい。」

「はい、ちゃうねん。もう知らんわ。もう、出ていけ。」

座らせられたと思えば、右手を強く捕まれ、玄関まで無理やり連れていかれる。

季節は7月だった。もう、落ちる寸前の太陽が外に出された僕を赤く照らす。

 

「ったく、忙しい家だぜ。」

あいつの家で見たxvideoesを思い出しながら、僕はそう呟いた。

頭の中がエロと遊びに支配されているのだからこうなって当然だ。

どんな状況でも、エロなのだ。

僕の前を何台かの自動車がすぎていくのを眺め、

「あぁ、こうやって季節は過ぎていくのだね。」

あいつの家で見た、快楽天ビーストを思い出しながら、そんなことを嘯いた。

 

気付けば遠くまで来てしまった。

ぼうっと今日の友達で見たPC画面を思い出していると随分歩いていた。あたりは完全に暗くなっていた。

これはまずい。

 

流石に怖くなった。街灯も少ないから真っ暗だし、これがお母さんにバレたら大変なことになる。

流石にエロは頭から消えていた。

そうだ、早く戻らないと。

これがバレたとうとう本当に殺されてしまう。

 

走る。走る。走る。

足が少し痛むが気にしてはいられない。

あの時の僕はメロスよりも、ガンプよりも、確実に早かった。

僕は一瞬の風になった。景色がグングン変わっていく。

どんなコーナーでも今の僕に差はつけられない。僕の前では瞬足なんてゴミだ。

僕が最短で走り抜けるルートが黄金に輝いて見えた。

 

ここを行けば、もう家、やっと家だ。僕は少し安心した。

少し安心すると、あいつの家で見たAV女優が走馬灯のように僕を応援し始めた。

 

希崎ジェシカが暖かく語りかける、

「大丈夫よ。もうすぐ、もうすぐ、家だわ。」

 

かすみ果穂が優しく呟く、

「安心して、あなたが玄関から離れた事はお母さんにバレていないはずよ。」

 

少し遠くの方で明日花キララが怒鳴る、

「お前、どこ行ってたねん。早よ戻ってこい。殺されたいんか。」

 

 

 

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